[循環器とは]
人のからだの中では血液がぐるぐると回っています。それによって、取り込んだ酸素や栄養分をからだの各部分へ送り込み、そこでできた炭酸ガスや窒素化合物などの老廃物を肺や腎臓へ運びます。その血液を循環させるための装置を循環器といいます。ポンプである心臓と輸送管である動脈、静脈がこれにあたります。
  病気としては、各種の心臓病、動脈硬化症、高血圧、静脈血栓症などがあります。

[心臓の役割] 
普通の心臓は1回の拍動で約70mlの血液を送り出 します。1分間70回打つとして、1日約7トンの血液を送り出していることになります。大型トラック 一台分の水をくみ上げるのは大変な労働です。心臓は毎日休むことなくその作業を続けています。

[心筋の力と心不全] 
その力は心筋によって生み出されます。拳ほどの大きさの筋肉が、収縮と弛緩を繰り返すこと、それが心臓のパワーのすべてです。その心筋の力が全体に低下した状態が心筋症で、一部が酸素がこなくて窒息死してしまっているのが心筋梗塞です。そのほかの原因、たとえば高血圧が長く続いても心筋はまず肥大し、ついで弱ってきます。
つぎにのべる弁の障害で心筋に負担がかかり続けても同様です。そうなると心臓は体が必要とするだけの血液を送り出せなくなります。その状態が心不全です。はじめはもっとも血液を必要とする労作時に呼吸が苦しくなり、また疲労を感じるようになります。

[弁の障害と弁膜症] 
心筋が収縮と弛緩を繰り返すだけでポンプとしての役割をはたせるようにしているのが心臓に4つある弁です。全身から静脈によって心臓に帰ってきた血液を肺にむかって送り出すよう流れをコントロールしているのが、三尖弁と肺動脈弁です。酸素をもらいきれいになって肺からもどってきた血液を全身に向け送り出せるようにしているのが、僧帽弁と大動脈弁です。それらの弁はいずれも狭くなって血液が通りにくくなる狭窄症と、通った血液が逆流してきてしまう閉鎖不全症をおこすことがあります。それが心臓弁膜症です。これも程度と年限によっては心不全の原因となります。

[リズムの制御と不整脈] 
心臓には血液をためておいてタイミング良く心室に送り込んでいる心房とポンプ作用をしている心室があります。心臓が規則的に打つよう信号を出し、かつ心房、心室の働きを時間的に調整し、心臓が1つのポンプとして働くよう電気的にコントロールしているシステムがあります。刺激伝導系です。この系が、うまく刺激を発生しなくなったり、伝導が途切れたりする場合や、ぎゃくに余分な刺激を発生したり、電気的な興奮が旋回する場合があります。それが不整脈です。めまいや動悸を感じます。

[冠動脈と狭心症] 
懸命に働いている心筋に酸素と栄養を供給しているのが冠動脈です。冠動脈の敵は動脈硬化です。古くなった鉄の水道管が錆でなかが狭くなっていくのと同じように、動脈硬化でできたこぶのような隆起が内腔を狭めていきます。管腔は狭まったが、まだ穏やかな生活をしているときに心臓が必要なだけの血液は流せるが、すこし無理な生活をしているとき、つまり急いで歩くときや階段を上るときに必要とする分の血液は流せない状態が労作狭心症です。心臓の一部で酸素欠乏が起こるので胸が苦しくなります。休んだり歩調をゆるめるとじきに治まります。狭心症の多くはこのタイプです。
このほかに、冠動脈がかってに痙攣して血液が流れなくなるためにおきる狭心症があります。安静時狭心症です。明け方におきることが多く、症状も労作狭心症より重く、持続時間も長いのが普通です。つよい不安感や不快感をともないます。

[心筋梗塞と不安定狭心症]
これらは、冠動脈の管腔が狭くなったり、一時的に閉塞している状態ですが、30分以上持続的に冠動脈がふさがってしまうと、その冠動脈から酸素をもらっていた心筋は窒息して死んでいきます。急性心筋梗塞です。多くは、動脈硬化でできたこぶのようなものの表面が破れ、そこに血の固まりがくっついて冠動脈をふさいでしまうことでおきます。まさに窒息するような苦しい痛みが、恐怖感とともにおそってきます。
約半数の患者さんでは何の前触れもありません。前触れのある患者さんもあります。血の固まりはできたが冠動脈を完全にはふさいでいないときです。先にのべた労作狭心症や安静時狭心症の症状がはじめておきるようになります。またはこれまであった狭心症が簡単におきるようになったり、症状が重くなります。こういう状態を不安定狭心症といいます。
そうなってから1ヶ月は心筋梗塞へ移行したり、突然死を来しやすいので必ず専門医を受診してください。最悪の結果は防げます。